題詠blog2012

お題の言葉を歌に詠み込み、投稿していく題詠blogというイベントに参加しました。2首目以降の歌は、投稿しなかったけれど気に入っている歌です。

前半


051:囲
「囲い屋も電車を使う前に立つ人がそうだと思ったことは?」

052:世話
できるのは猫の世話くらいですと言う人の娘の補導歴2

053:渋
クリームティータイムは渋めの紅茶だと言われたならば犬 生き延びろ

054:武
「武道ってあれに似てる」ってなんだろうって思ったら葡萄の話 ばか

055:きっと
あの人は言ったぱきっとした絶望にいてあなたを思いはしない

056:晩
ネット依存の彼女は白く晩春のさくらをひとり見に行くらしい

057:紐
君を縛るならば紐で丁重にと告げるあなたの失われた眼

058:涙
赤く腫れた涙袋持ち触れたことのないひとが笑った

059:貝
このひとが冬に生まれた幸せを シチューには貝柱をいれて

060:プレゼント
誕生日まだ先なのにプレゼント買っちゃったから今夜会おうよ

061:企
珈琲に砂糖を多めに入れていい 世界征服の企てもいい

062:軸
縦軸をご覧ください 48の目盛りでゆらが壊死しています

063:久しぶり
肋骨に軋む臓器がありまして お久しぶりねと言ったりします

064:志
靴をはくけんけん今朝の秋 志という字を名前に持って

065:酢
君の腕に落ちる酢酸カリウムの暴くべきDNAは涼しく

066:息
君は言った息をする限り増えていく償えないものに厭きたの

067:鎖
誓いを守らせる鎖があっても世界平和を祈れない
くらい

068:巨
巨大氷惑星行きのトンネルに吹き込む通学路からの秋風

069:カレー
ヒットマンがライフル抱いて覗くのはカレードスコープだった夢です

070:芸
芸のない話でしょうか死にたいと告げたら君は笑う気がした

071:籠
ル・クルーゼのお鍋が買えない 太陽にあてたフェルトの家に籠ろう

072:狭
狭義での絵本と呼ばれるものを読む1才半の健治の犬歯

073:庫
愛はないと信じきれないふみかちゃんの火薬庫に火をつけないでいて

074:無精
無精卵アレルギーだと言う妊婦に席ゆずりたり電車ふるえる

075:溶
超自我の出来上がる前タナトスは何処に溶け込んでいたのか 君

076:桃
味方など欠片もいないと思う日に桃乱切りでフランベされる

077:転
魔女の首も少女の首も落ちたなら転がる 夜が更けてもずっと
魔王の首は転がり落ちてそれを拾った少女の話

078:査
かなしさの根源探査機壊れかけで〈おかえり私が目的地です〉

079:禁
宵寒く禁帯出の辞書を持ち悪戯しているように笑った

080:たわむれ
たわむれに入ったバーで呼び捨てにしてみる隣に座る男を

081:秋
Fly Me to the Moonを流された夜風すばやく秋惜しみゆく

082:苔
苔玉に眠る根っこは夢を見る 雨はシルル期と同じフレイバ

083:邪
人の手は邪王炎殺黒龍波を撃てず彷徨う真昼の街を

084:西洋
君が飛び降りた日のこと大西洋と大平洋はつながりだした

085:甲
手の甲にキスされてみたい夜だってあります君は歩くの速い

086:片
素数なら片っ端から許された(夢を見ながら死んでゆく夢)

087:チャンス
少女らがチャンスについて語り合うカフェで待ち人10分遅れ

088:訂
訂正が許されることはずっとない 今朝ひそやかに腐った卵
訂正が許されなかったさみしさに訂正印を捺して死とする

089:喪
遡る川が記憶を押し戻す 喪った人は喪われたまま

090:舌
舌先三寸で消える言葉でいいんです好きです好きです

091:締
何かしら花の匂いがするようで締め切った部屋に人形泣いた

092:童
吾が胸と同じ高さの図書館の棚うらめしく児童書を抜く

093:条件
心理学のレポートの上にだけ生きる無条件の愛を絞め殺す音

094:担
不幸せ担当として育てられたはずだったのにあなたも泣くの

095:樹
小春日に樹海に行こうと外を見たあなたの手をとるために息する

096:拭
お月さまの通る窓を拭うまだ異世界に行くおはなしが好き

097:尾
幸運のかぎ尻尾あるのらねこに手招きしており白梅は咲く

098:激
包丁を突き付けられたこともある あなたの祈りは激しくも白
激情を知らないはずのサボテンに預けたナイフが返ってこない

099:趣
掃き清められた道を帰るまでに落ちた花びら趣とする

100:先
つらら折り終わったら朝冷えた手で先端恐怖のあなたを起こす

052:世話
再録にあたり2回を2に改めました。
067:鎖
HUNTER×HUNTERを本事取り。クラピカ。
067:カレー
em;ouのhit manの本事取り、というか返歌です。
095:樹
手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が(河野裕子)の影響を 受けていることが明白すぎて。


前半
index短歌→題詠blog2012
2012.07.20-2012.11.29初出
初完走やったー。