→後半
001:今
今すこし早足になるもうすこし生きてる体にしてあげるため
002:隣
いつだって秋の隣にいるような少女の顔して待つよ海バス
003:散
椿とか魂魄のように簡単に散らしていいよ貴方の指で
004:果
濃縮還元果汁が何なのかも知らないひだまりにいる子
005:点
まっすぐに歩いていこう泣いた日に駅のホームの点字ブロック
006:時代
「華の88年組」という言葉を思い出し、華の88年組のひとりとして、この時代に生まれたこと、この時代に生まれた自分を肯定したくて詠みました。
生まれたときから「こんな時代」と言われ私は元気に育ちました
007:驚
鳥が死にモノトーンに沈む君の部屋にもう戻らない「驚く勿れ」
008:深
物語のなかだけにある救出を諦められない深く抱き合う
009:程
深海魚になりたい程度に君のこと愛しているから暗くしてくれ
010:カード
最後のカードを切りながら「私のこと好き?」と微笑む汝(なれ)に
011:揃
12色揃っているよ 仄ひかる地下室のなか待ってるんだよ
012:眉
頑張れと言ってしまった難題に眉をしかめるその顔が好き
013:逆
棘があるから美しいと微笑(え)む人の逆悪までを愛しむ闇夜(あんや)
014:偉
寒いなか偉かったやろと出迎えてくれた誰かさんにもチョコを
015:図書
知ることもなく終わったやよい図書準備室に恋があるのかなんて
016:力
人々が夜半に流す涙粒の表面張力の力で踊れ
017:従
月蝕 あなたに従うだけの存在でいいから幸せにして
018:希
人生に希望はおまけにすぎないと夢で女は煙になった
019:そっくり
幸せにそっくりな顔して近づいて抱いてみせてよ花冷えの夜
020:劇
母さんを殺さうと思ふ劇中に踊り續けた女が眠る
人一人殺された劇を観た帰りひとり歩けば星の無い街
021:示
おちこんだ顔みたいな示(しめ)の字を書くひとだった喪明けの日も雨
022:突然
生きているひとのいること・死んでいるひとのいること突然の晴れ
023:必
五月末日締切必着分の思い出を風に流したところ
024:玩
食玩の小さなカップでおままごとが母になれない私の遊び
025:触
君が僕の気に触れたからいつだって僕は笑顔でいられるんだね
026:シャワー
人の愛の見えないことを思うときシャワーの温度を2度あげてみて
027:損
熱量を損耗している5時過ぎに温いコーヒーが似合う死にたさ
028:脂
脱脂綿にオキシドールを含ませて 誰も傷つけられないひとよ
背脂の浮いたラーメン食べに行こ そのあと一緒に死に場所探そ
029:座
うちの好きなひとはTIGER & BUNNYの曲が好きだそうで、タイトルを言っていたのでできた歌です。
オリオン座の星は最早無いらしく君がやさしくなぞる亡骸
030:敗
戦いに破れた人にだけ笑んだ貴女の紅茶が濃くなりすぎる
031:大人
大人びた口づけしてた春になれば梅のこぼれ落ちる小路で
032:詰
おがくずを詰め込んでみて今ここに私のナイフを突きたてるから
033:滝
滝の音が1km先から聞こえ来るカフェのテラスで貘を食う夢
034:聞
心臓の音を肌で聞くような姿でもたれる肩のごつごつ
035:むしろ
むしろ泣いてしまえばいいですよ 春風吹いて死ぬひともいる
036:右
悲しみが右手に迷い込んだなら両手で包むひとになるから
037:牙
世の中にうちも生きると知らしめるため「にっ」と笑ってみせている牙
038:的
たんぽぽの小路にだって画期的とシールを貼って歩くんだジョー
もうそっとしといてあげて愛的なものの死骸を眠ったままに
愛的なものばかりある早朝によく鳴く鳥を見たことがない
039:蹴
突っ伏したあなたを少し蹴ってみる「おつかれ」聞こえていないから言う
040:勉強
心理学の勉強をするカフェテラス 心が見える幻覚を飲め
041:喫
あの喫茶店に入ることはついぞなかった坂道 駅へと続く
042:稲
それだけのことを犯したひとがいる風に波打つ若い稲の葉
043:輝
夕暮れに川面ちらちら輝いて 何も言わない散歩だったね
044:ドライ
あのひとにもらったドライローズ入り砂糖隠した本棚の本
045:罰
梅雨迫り罰を受けるべき君の肩安らかに眠るかなしみ
046:犀
ひねくれの彼女の庭に銀木犀を無断で植える夏の陰謀
047:ふるさと
この町を出た友(ひと)の言う「ふるさと」はやわらかき音しており 夕べ
048:謎
君が追い求めているもの謎ペキラ 命は辞書に載らないだとか
049:敷
天の川の河川敷デートもあったかも知れない君が彼岸へ消える
050:活
死にたがりの活性化エラー梅雨明けに君の望むべき未来、来て。