「たーくん聞いて」
いいよー。でもお姉ちゃん、ひざしてくれたらだよ。
「ふふ、ふわふわ」
いいでしょー。なでなで好き。お姉ちゃんの手、つめたいね。僕の毛でぬくめてもいいよ。とくべつね。
で、お話なに?
「未南が『その話は、この2日で23回は聞いたような気がする』とか言って聞いてくれないの。おおげさ! デリカシーがないよね」
お話きいてくれないの? 兄ちゃんヒドイね。でりかしいもないね!
……でりかしいってなんだろう。お姉ちゃん、でりかしいってなに?
……お姉ちゃん、僕をなでなでしてばっかりで答えてくれない。
でも、おちこんでるヒマはないぞ! お姉ちゃん! 僕がいるから大丈夫だよ!
「ゆうちゃんはお勉強中だし、お母さんはお仕事だし、もう、たーくんしかいない……。たーくん好きっ!」
僕も好き!
で、お話なに?
「たーくんもふもふ。あ、ブラッシングしてあげる」
だっこしてくれました。ゴロゴロ。
あ、でりかしいって、毛のことじゃないかな。お姉ちゃん毛のことばっかり言うし、兄ちゃんはもふもふじゃないもんね!
お姉ちゃんがブラシをとりに行きます。僕のネズミ入れにあるんだ。ネズミにげてないかな。あー! お姉ちゃんがブラシとったから、かくしてたネズミが出てきちゃった! なおしてよ。あ、もどらないでー。うー……。
でりかしいがないとネズミのこと分からないんだ!
ん? ママの椅子の音がしました。こっち来るかな。……来た!
「おかあさん、休憩ですか?」
「んー。ボーッとしてまうん……」
ママおつかれみたい。だいじょうぶかな。
「たーくん、ネズミ出てるよ。いいの?」
ダメだよ! あのね、ネズミかくしてないとダメなの。にげちゃうんだよ。
「隠しておこうね」
さすがママ、わかってる!
「たーくんゴメンね」
お姉ちゃんがあやまってくれました。いいよ。許してあげる。
僕のこと、ママはなんでも分かってるね。ママはソファーにすわります。うーんと体のびのび。猫みたい。ママも猫だったら、お仕事しなくていいのにね。
「イチちゃん、あれ、決まった?」
あれってなに?
「うーん……それが、迷っちゃって」
「イチちゃんは無欲だからね」
「違うんですよ、欲しいものがありすぎて。でも、やっぱり、せっかくのクリスマスプレゼントだからspecialじゃないと!」
あ、あれだね! ママがお姉ちゃんと兄ちゃんに、なんでも好きなものあげるんだって。僕にもちょうだいって言ったら、ママがにぼしくれました。でも、お姉ちゃんは迷ってるから、まだもらえないんだね。……あ、お姉ちゃんもおいしいものにしたらいいよ。うれしいよ!
「親からのクリスマスプレゼントなんて初めてですもん」
お姉ちゃんニコニコしてます。もう、うれしいきもち?
「それは光栄」
こーえーですね。ところでお姉ちゃん、ブラッシング止まってますよ。
「なぁに、たーくん。かわいい声で鳴いて」
むー! でりかしい無い!
でも、お姉ちゃんがえへへって笑って、
「でも、たーくんとみんながいるだけで幸せだなぁ」
って、ブラッシングはじめてくれました。笑ってるお姉ちゃんにブラッシングしてもらうとゴロゴロが出ちゃいます。今日もいいにおいだね。
「ま、まだ2日やし、ゆっくり決めなさい。遠慮しなくていいからね。臨時収入も入ったし」
そう言って、ママはお部屋にもどりました。お部屋でじっとして、手でなにかするの。あれがママのお仕事なんだよ。とってもたいくつそうだから、ときどき遊んであげるんだ。
僕もお姉ちゃんになにかあげようかな。お姉ちゃん好きだし。うーん。でも、お姉ちゃんはスリスリしただけで「もふもふ」ってよろこんでくれるし、むずかしいなぁ。ネズミあげても、ネズミじゃなくて僕をなでなでしてたし……。どうやったら、もっとうれしくできるんだろう……。
「あ、もう晩ご飯の準備しないと。たーくんごめんね。降りて」
やだー! うわ! お姉ちゃん急に立たないでよぉ。ビックリしたよ……。
でりかしい無い!
……ん? でりかしいといえば……。
……あれ、お姉ちゃん、お話なんだったの?