サンタと猫 数年後

 兄ちゃんがおもちゃをユラユラさせています。でも僕は一通りあばれたので満足しました。ちょっと目が回って気持ち悪いから止めたのではありません。しかし兄ちゃんは、バタンといきおいよく倒れてそのまま横になっている僕を見て
「目が回った? もう嫌?」
 と聞いてきます。とても楽しそうです。僕はそんな兄ちゃんを無視して毛づくろいを始める事にしました。最近、毛が伸びてきたから大変です。特に、あごの毛が長いからジャマです。口に入って取れないので、首をうんとそらして頑張りますが……取れない!! もう嫌!
「たーくんまたやってる」
 笑う前に助けてよ! ……と思っていたら助けてくれました。指でひょいっと。人間ってなかなか便利ですね。
「あごの毛、長いから舐めきれないんだね」
 そうなんですよ。他の所をなめているのにまじってきたりしてジャマなんです。口に近いから仕方ないですけど。
 ッ!!
 ……。
 背中に何かが攻撃してきたのでパンチしようと体をねじったら、兄ちゃんでした。もう、猫さわがせなんだから。兄ちゃんは僕の背筋をほめています。そして僕のお腹に手を伸ばしてきたので、僕はとっさにその手をひっかいてしまいました。
「たーくんひどい」
 お腹を触ろうとするのがいけないんです!
「びっくりしたんだよねぇ。たーくん」
 ずっと僕たちを見ていたママが言いました。ママはよく分かってますね。さすがママ。

「ゆうちゃんがサンタを信じてるのは、今年で最後かもね」
 兄ちゃんが言いました。
「サンタっていうのは、子どもに夢を与えられるような素敵な大人を指すのよ」
 ママが言いました。ふふんっ。ちょっと得意げです。
「だから子どもはサンタが好きなの」
 だからゆうちん、サンタが好きなの?
 サンタっていい人? どろぼうなのに?
 うーむ……。

 兄ちゃんが立ち上がりました。
「じゃあ、サンタはプレゼントを渡しに行ってきます」
「頼んだ」
 兄ちゃん、僕も行く!


indexプレゼント→サンタと猫 数年後
07.12.20