おまけ

「暇だよアーリス」
 呟くやいなや、真子斗は手に届くところで寝ていたアーリスを抱き上げた。
 体に力が入っていないのか、脇を手で挟んで持ち上げると、びろん、とだらしなく四肢が伸びる。
「……なぁにするんだよー……」
 本当に猫扱いされるのが嫌なようだ。半分寝ている状態でも、爪を出した手で攻撃してくる。
「……かわいくない奴」
 つまらなくなったのでおろしてやると、アーリスは可能な限り体を伸ばして、大きなあくびをした。
 すっかり覚醒した瞳で真子斗を睨むように見上げる。
「もう、せっかく気持ちよく寝てたのに。安眠妨害はんたーい」
 ねぇライン様、と振り返るより早く、その首根っこが掴まれて、体が宙に浮いた。一瞬きょとんとしたアーリスだが、自分がラインに猫づかみされた挙げ句宙吊りにされていることに気づくと、
「うわぁっ、放せ放せーっ!」
 逃れようと必死に暴れ出す。
「いいじゃないか、お前を眺めている分には退屈しないんだ」
「さりげなくヒドイ! ライン様ヒドイ!!」
 爽やかに笑うラインを、まぁ確かにひどいかもしれないがとは思いつつ、それでも賛成意見なので真子斗は何も言わず眺めていた。アーリスをからかっているラインは、本当にいつも楽しそうだ。
 手足をばたつかせ体をひねってようやく解放されたアーリスは、しゅたっと見事に着地してみせると、今度はラインを睨めあげる。
「そうやってライン様はいつもボクをいぢめるっ!」
「いじめてるんじゃない、遊んでやってるんだ」
 こんなに可愛いし、とアーリスの頭をわしゃわしゃと撫でまわす。少しでも抵抗しようと、アーリスは両前足をラインの手にかけた。
「猫扱いしないでください!!」
「猫の分際で何を言う。いっそこのままいたらどうだ? 持ち運びに便利だし」
「ボクは物じゃないっ!!」
 ぎゃあぎゃあと喚くのはアーリスだけで、ラインは涼しい顔で笑っている。
 真子斗はそんな二人を見て、仲がいいんだなぁ、と一人納得し頷いた。


thanx:架琉綺さん
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06.08.26