9月24日午後5時過ぎ 晴天

 秋、傾き始めた太陽の光は柔い。日本が誇る四季の中でも、最も優しい時間だ。
 風は北西から、髪が揺れる程度に吹く。ちょうどぴったりと西に背を向けて歩く人にとって、それらはよき散歩仲間だった。
 土手を歩く1人の女性。年老いた中型犬を連れている。犬の、毛が抜けて細くなった尾は、犬が歩く度に弾んだ。女性はその様子を微笑みながら見ていた。
 遠くで汽車が鉄橋を渡る。犬が、道をそれて秋草の中に入って行く。少女を思わせる軽快な足取りだ。周囲を確認してから綱を放してやると、ずんずん草をかき分けていく。

 強めに風が吹き、女性は振り返る。えのころ草が、秋の光に輪郭を黄金色に染められながら揺れていた。草がそよぐ音と、愛犬が草を騒がす音と。


indexlog→9月24日午後5時過ぎ 晴天
08.09.28 08.11.07修正