おでこにキス

 まま……なんで夏はあついのですか……? たーくんは、そろそろ本当にとけそうです……。
 しかも、ジージジージうるちゃいです。おひるねのジャマします。見えないからやっつけられないんだよ! かくれてるの。うぅ……。

 でも、ままのおへやはあつくないです。ひんやり。どうして?
 ままのおへやでのびーってなります。もう車の下はイヤです。ままのおへやが1ばんなの。

「あ、クロ! おいでおいで」
 とままが言いました。にぃにです。にぃに!
 ままはとうめいなドアをあけて、にぃにが入ってきました。にぃに、にぃに!
「クーラーはやっぱり涼しいな」
 とにぃには言いました。あくびしました。たーくんもあくびしたくなっ……あぁーっきゅッ!
「2人ともおねむかな?」
 ままが笑います。おねむじゃないの……。

 あ、そうだ。にぃに、にぃに。
「何だ?」
 にぃににね、しつもんなの!
「何だ?」
 にぃに、ジージジージ言うのがね、おひるねのジャマするの。
「……セミのことか?」
 セミってなぁに?
 あのね、ジージはね、見えなくてね、うるちゃいの! いじわるでしょ?
「セミは見えるぞ?」
 え?
「ついてこいよ、見せてやる」
 見せてくれるの? にぃにすごい! ついてく! ついてくぅッ!

 にぃにはドアをあけました。カラカラカラ。たーくんはついていきます。
「猫よ、開けたら閉めろ。暑いではないか」
 にぃに、ままが……。
「開けるなら閉めるなって伝えておいてくれ」
 まま、にぃにが……。

 外に出るともっとうるちゃいんだよ。だからセミは外にいるんだって、にぃに分かったんだと思うの。
 にぃに、そのセミってどこにいるの?
 にぃには木にジャンプ! のぼります。あのね、にぃにはとっても上手なんだよ。なんでもできるの!
「よく見てろよ……」
 にぃには手をのばしました。うーん、くらくて見えないよ……。
「よく見ろ」
 うーむ、黒いのがいるような。  にぃに、手で黒いのをつんつんってしました。そしたら
「ビィィ! ビビビッ」
 おぉ!? なんの音!?
 なんかとんだ!! にぃに、なんかとんだ!!
 にぃに、セミって鳥だったんだね!
「見えたな、あれがセミだ」
 どっか行っちゃったね……。でも、まだうるちゃいの、なんで?
「沢山いるからな。まぁ、秋になったらいなくなる」
 あき? あきってなに?
「すぐに分かるさ」

 にぃにの後ろについて、ままのおへやにもどります。てくてくてく。

 にぃに、なんでセミはジージジージ言うのかな?
 セミはうるちゃくないのかな? お耳ないのかな?
「サクラは、セミも俺たちみたいに話をしているんだって言ってたぞ」
 なんて言ってるのかな? にぃに知ってる?
「さぁな……。暑い暑いって言ってるんじゃないか? お前みたいに」
 言ってないもん! にぃにいじわる! セミみたい!
「溶けるー溶けるーって言ってるじゃないか。猫は溶けないから安心したらどうだ?」
 たーくんセミじゃないもん! うるちゃくないもん!
「はいはい。そうだな」

 むぅぅ……!!
 ジージジージ言ってやるもん。ジージジージジージジージ。
 にぃにのおひるね、ジャマしてやる!

 あっ!!
 にぃに、止まった。

 そんで……にぃにのしっぽ、すごくゆれてる。おこっ……た?

 にぃに、こっちに来ます。
 にぃに……おこった? ごめんなさい!
「まったく……子どもはこれだ」
 ぺろ。
 にぃに、たーくんにペロってした?
 にぃに、おこってない?

 …………。

 にぃに、ジージジージ!
「何はしゃいでるんだ。行くぞ」
 ジージジージ!


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07.08.01